2014年10月アーカイブ

私の発明相談では、相談者が希望される発明とは異なる発明の出願を奨めることがあります。

理由は、そちらの方が強力な権利と成り得るから、です。

例えば、自転車のペダルをモーターで助力する所謂アシスト自転車を初めて発明したとします。

当然、発明したアシスト自転車を出願して権利化することはできると思うのですが、

もし、そのアシスト自転車のバッテリーがサドルを支える棒部材であるシートチューブに設けられているとすれば、

「バッテリーがサドルの下方に配置されている二輪車」で出願することを奨めるかもしれません。

自転車にバッテリーを搭載する場合、サドルの下方にバッテリーを配置するのが二輪車のバランスや使い勝手から考えて理に叶っていると思うからです。

この場合、自転車は必ずしもアシスト自転車とは限らず、電気部品を備える普通の自転車でもいいですね。

もっと言えば、電気バイクや三輪車でもいいかもしれません。

「バッテリーがサドルの下方に配置された二輪車」は、アシスト自転車に比べて地味で華やかさの欠片もない特許かもしれません。

しかし、大きくて重いバッテリーをサドルの下方以外の場所に設置しようとすれば、

現実的な商品として成立させることはなかなか困難になると思います。

現在販売されているアシスト自転車の構造を踏まえると、この権利だけでアシスト自転車の模倣をかなり阻止できそうですよ。

体調を崩したりして久しぶりの更新です。

さて、ビジネスモデルを守る方法についてですが、

コンピュータシステムとは無関係なビジネスモデルをそのまま権利化することは困難ですので、

そのビジネスモデルに必要な「物」や「方法」で権利取得を考えます。

例えば、自動車の夏用タイヤを冬用タイヤにユーザの自宅で交換するサービスを思い付いたとします。

このサービスは、ユーザの自宅に行くことになりますので、駐車スペースや機動力を考えて自身は自動車よりもバイクで動き回った方が効率的かもしれませんね。

この場合、仕事に必要な道具類をどう持ち運ぶかや、一度のジャッキアップで4輪の交換をできないか、

そもそもジャッキアップなしでタイヤ交換できないか、などなどユーザの自宅で効率的に作業を行うための手法や道具を考えます。

そのように考えると色々案が、つまり発明が出て来ます。

新しいビジネスであれば、必ず出て来ます。

これらについて特許、意匠、商標などを取得していけば、

ビジネスモデル自体を権利化できなくても、そのビジネスに必要な「物」を権利化することによって

実質的にそのビジネスモデルを守ることも可能になってきますね。

昨日から、青色LEDの実用化に関して3人の先生(天野先生は浜松出身です!)がノーベル物理学賞を受賞された話題で持ちきりですね。

今回受賞されたお三方のうちの一人の中村先生は、かの特許権の対価訴訟で有名で知財業界では知らない人はいません。

なんといっても、当時在籍した会社からの発明の対価が2万円だったのに対し、

裁判所で認定された対価の額は驚愕の604億円でした。

一方、iPS細胞で同賞を受賞された山中先生は、iPS細胞に関する特許権の取得について、

「特許獲得にはiPS細胞の論文を書くとき以上の労力がかかった」と述べられております。

特許って、ノーベル賞受賞者をもってしても

取得することも、取得した後にその価値を認めて貰うことも大変なんですね。

新しい商売の手法や形態を思い付いたので特許を取得したい、と相談されることがポツポツあります。

いわゆる”ビジネスモデル特許”ですね。

しかし、ビジネスモデルは、人間が決めた「単なる取り決め」に過ぎないので特許を取ることはできません。

特許が守ろうとしているのは、「技術的なカラクリ」であって「人間が決めたルール」ではないのです。

ただ、新たなビジネスモデルをハードウエア資源を用いて具体的に実現していれば、特許を取得できる余地があります。

つまり、「新たな商売を実現するコンピュータシステム」という感じでしょうか。

それでは、コンピュータを用いない新たな商売の手法や形態は、どう守るのか?

”完璧”ではないですが、守り得る方法があります。

次回「後編」で考えてみたいと思います。

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